当院では、安全性と分かりやすさを大切に、次のような流れでECT(電気けいれん療法)を導入しています。


1. ECT導入の決定(適応の確認)

  • 医師が診察を行い、ECT の適応があると判断した場合
  • または、患者様からのご希望を受け、適応が確認された場合

に、ECTを治療の選択肢としてご提案します。
(※適応の詳細は別ページ「ECTの適応」で説明しています)


2. 当院の管理体制(必ずご確認ください)

当院のECTは、
精神科専門医・麻酔科標榜医である医師が、診断・適応判断・麻酔管理を一貫して担当 します。

ただし、麻酔科専門医の常駐体制はありません。
そのため、以下に該当する場合には、当院でのECT施行は行いません。

  • 全身麻酔の安全性が十分に確保できないと判断される場合
  • 重篤な心臓・呼吸器・脳の病気が疑われる場合
  • 来院時の体調不良(発熱・強い脱水・呼吸症状など)
  • その他、麻酔リスクが高いと判断される場合

必要に応じて、入院下で安全にECTを行える医療機関をご紹介いたします。


3. 身体的安全性の確認(事前評価)

外来・日帰りで安全にECTを行うため、次のような身体的評価を行います。

● 相対禁忌に該当する病気がないかの確認
例:

  • 重度の心疾患(未治療の不整脈、重い心不全、最近の心筋梗塞など)
  • 頭蓋内圧が上昇する状態(脳腫瘍、脳出血など)
  • 重い呼吸器疾患(重度の喘息、重いCOPDなど)
  • 麻酔薬に対する重いアレルギー
  • 重度の肝・腎機能障害
  • 栄養状態の極端な不良
  • BMI 30 以上(気道管理の困難性のため当院では施行不可)

上記に該当する場合、当院での日帰りECTは行いません。


4. 主な検査内容(安全に行うために必要です)

治療前に次の検査を行います。

● 血液検査
肝臓・腎臓の働き、電解質バランス、貧血の有無などを確認します。

● 心電図検査
心臓に負担となる異常(不整脈、虚血など)がないか調べます。
※発作性不整脈は1回の検査では分からないことがあり、症状がある場合は追加検査をお願いすることがあります。

● 胸部レントゲン検査
心臓の大きさや肺の病気の有無を確認します。

● 頭部画像検査(CTやMRI)
必要に応じて行います。脳腫瘍や出血など、ECTが禁忌となる状態を確認します。


5. 内服薬の調整(重要です)

一部の薬はECTの効果や安全性に影響します。

調整・中止を検討する薬の例:

  • ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬
  • 抗けいれん薬
  • リチウム(当院では中止することが多いです)

薬の中止や減量は、患者様の状態をみながら、安全に行います。
※絶対に自己判断で薬を止めないでください。


6. 導入までの具体的な流れ

  1. 外来治療のなかでECTを検討
  2. 適応の確認
  3. 身体的評価・検査の予約
  4. 検査実施
  5. 結果の確認・麻酔リスクの最終判断
  6. ECTおよび麻酔説明・同意取得
  7. 治療日の予約
  8. 初回ECT施行

7. 当院で施行が難しい場合の対応

安全性の観点から当院で施行できない場合には、
ECT実施が可能な医療機関を紹介いたします。
患者様の希望を踏まえ、最適な治療方法を一緒に検討いたします。